80~90年代少女マンガの傑作。過去を受け入れ未来へ向かって生きようとする物語。 日渡早紀/ぼくの地球を守って

公開日: : マンガ

男性でも知っている少女マンガの名作。
30代男女は割と通ってきた作品なのだろうか??

自分も名前だけは知っていたけれど、特に読まずにここまで来てしまった。
でもって最近マンガ好きなおっさん達が、お勧めの少女マンガで
こぞってこの作品を推していたのでちょっと気になった。
嫁に「ぼく地球(ボクタマ)って面白いの?」と聞いたら
「え、読んでないの?」みたいなリアクション。

ぼくの地球を守って (第1巻) (白泉社文庫)
日渡 早紀
白泉社
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読んでみると確かに噂に違わぬ面白さ。

前世の記憶を夢に見る7人が、前世と同調しながら今を生きる。
前世とか運命とかに縛られる因縁ものは、文学のテーマとしても良くある話。

それは血は水よりも濃い、という血縁の歴史として描かれることが多く、
血が行動に足りたてるのか、それが因果応報的な運命だとすれば、
どのように抗うのか、あるいは受け入れるのか、この手の話は盛り上がりどころが多くて面白い。

そう言えばエミール・ゾラの『ルーゴン・マッカール叢書』の話も思い出す。
祖先の精神的障害に端を発する貪欲・怠惰・狂信などの性質が、
子孫の人々の中に、どのように現れていくのかを
描き出そうとするのが、双書執筆当初のゾラの意図だったと言われている。

『ぼく地球』も前世の記憶を、夢を見るという形で徐々に共有していく。
そして前世の悲劇、その真実が明らかにされていく中、
どのように過去を受け入れて、未来に生きるか、ってのがテーマ。

過去との決別ではなく、過去を受け入れ、未来へ向かうってのが
これまた前向きで人の共感も呼ぶんだろうな。

作者の日渡早紀の代表作にして最大のヒット作なんだけれど、
2013年頃、微妙な続編を書き始めている。

まぁ、あまり良い予感しないので、
大人しく『ぼく地球』の余韻に浸っていた方がよさそうな気がする・・・

ボクを包む月の光―ぼく地球次世代編 (1) (花とゆめCOMICS (2801))
日渡 早紀
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ぼくの地球を守って
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